2008年12月1日月曜日

心の在処

私の中におけるその街は、あの時から時間が停止したままだった。
在りし日の情景がそのままに私の中へ焼きついているからだ。

それは過去へと繋がる道
進むこともできず、引く場所はこれ以上にない。
望んでいたのはこの街か、
それとも光の中へと葬り去られた記憶の欠片か

ただ時だけが悠然と流れ、人は心は形を変える
若鳥が巣立った後のように、この街には何もない。
そこに私を留めていたあらゆるものは残っていないのだ。

私の目的が望郷なのだとすれば、
もはや他人となったこの街に何を望んでいたのか
彼女たちは理想を求め、新天地へと繰り出した。
かつてはそこにあったというだけの事実
今はただ、私一人がここにいる。
停滞することに意味があるとするのなら
一体何を望み、何をなすために今があるのか
過去に縛り付けられた私の望みも既に費えた。



それは私が望んだ結末だったのだろうか
寒空に瞬く星は形を変え在野を照らす。
彼女たちがそれに関しないのは幸いである
荒れ果てた野原
腐り落ちる果実
予定された空虚
老いとは正にこれのことだ
ああ…なんと恐ろしい
そしてなんと美々しい
朽ち果てることの快楽
堕ちていくことの孤楽
狂わしくもいとおしいこの堕落は
禁断の甘美な果実をむさぼり喰うが如く
全てを与えられるよりも悩ましい自堕落
凡ては狂言。今際楽園

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