私の中におけるその街は、あの時から時間が停止したままだった。
在りし日の情景がそのままに私の中へ焼きついているからだ。
それは過去へと繋がる道
進むこともできず、引く場所はこれ以上にない。
望んでいたのはこの街か、
それとも光の中へと葬り去られた記憶の欠片か
ただ時だけが悠然と流れ、人は心は形を変える
若鳥が巣立った後のように、この街には何もない。
そこに私を留めていたあらゆるものは残っていないのだ。
私の目的が望郷なのだとすれば、
もはや他人となったこの街に何を望んでいたのか
彼女たちは理想を求め、新天地へと繰り出した。
かつてはそこにあったというだけの事実
今はただ、私一人がここにいる。
停滞することに意味があるとするのなら
一体何を望み、何をなすために今があるのか
過去に縛り付けられた私の望みも既に費えた。
それは私が望んだ結末だったのだろうか
寒空に瞬く星は形を変え在野を照らす。
彼女たちがそれに関しないのは幸いである
荒れ果てた野原
腐り落ちる果実
予定された空虚
老いとは正にこれのことだ
ああ…なんと恐ろしい
そしてなんと美々しい
朽ち果てることの快楽
堕ちていくことの孤楽
狂わしくもいとおしいこの堕落は
禁断の甘美な果実をむさぼり喰うが如く
全てを与えられるよりも悩ましい自堕落
凡ては狂言。今際楽園
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